公正性を測定するのは難しいかもしれません。標準指標なしで、異なる理想の調整をはかろうとすると、問題がたくさんでてきます。特に職場ではそうです。ある従業員にとっての公正は、別の従業員にとっての不公正ということもあり、客観的に公正な手順を確立するのが困難な場合があります。
タイの大手砂糖メーカーThai Roong Ruang Sugar (TRR) Groupは、人事考課プロセスを見直し、部門長間で評価基準に一貫性がないかもしれない懸念に対処しました。3か所の自社工場の各部門で行なわれている評価を、Minitab Statistical Softwareを使用して調べるために、人事責任者は評価点の間の有意な差を調査し、公正性の基準の違いをなくすための新しい評価フォームを作成しました。データ分析により、部門長間の一貫性のない基準または従業員への不公正な判断の可能性と、新しい基準との間のギャップが埋められ、公正な報酬のガイドラインが確立されました。
課題
TRR Groupの人事部は、年次人事考課プロセスで使用する標準の評価フォームを部門長に送信します。部門長はフォームを使用して、監督下にある各従業員を評価し、完成したフォームを人事部に返送します。従業員の評価点は、給与調整、ボーナス、改善計画の決定に役立ちます。
TRR Groupのプロジェクトチームは、3か所の自社工場で従業員の人事考課プロセスを評価し、評価の基準を確立しました。Minitab Statistical Softwareを使用して、公正な報酬のガイドラインを確立し、不当な扱いの可能性をなくしました。
評価フォームは、仕事ぶりに基づいて従業員を評価することを部門長に求めるものです。各部門長による従業員の能力の測定のしかたを評価する方法がなければ、意思決定を行う際に主観的な測定を頼りにするしかありません。
極端に高い評価点と低い評価点の両方に、3工場の統括人事マネージャーは注目しました。統計的手法を用いて、データから、3工場の部門での従業員評価の違いと外れ値を調べることにしました。データで明らかになった内容によっては、部門長が従業員の仕事ぶりを測定する方法を標準化し、人事考課の公正性を確保するために、評価フォームを改訂しなければならなくなります。
Minitabによる支援方法
「このプロジェクトの最大の課題は、各部門で同じ評価基準を使用すると、監督者の判断に差がでることをTRR Groupの経営陣に理解してもらうことでした」とプロジェクトリーダー兼人事マネージャーVeerasak Suriyakraiさんは話します。Suriyakraiさんは、ヒストグラムや箱ひげ図などのMinitabツールを使用して、従業員の評価における外れ値の件数を割り出して、描画しました。部門長による不当な評価またはひいき、または従業員の採点方法に関する部門長間の意見の違いの証拠になります。
あるグラフの外れ値が別のグラフでは微妙な可能性があるため、ヒストグラムと箱ひげ図の両方を使用して各部門の評価点の度数を調べることで、外れ値の見落しがないようにしました。比較をするためのグラフは、要約で簡単に組み合わせることができました。
上記の部門Aの要約では、ヒストグラムと箱ひげ図の両方に外れ値があります。外れ値を特定することで、潜在的な偏りのある部門や、監督者間で採点基準が異なる部門に、プロジェクトの焦点を当てることができました。
グラフでさらなる調査が必要な部門を確認した後、分布の適合性を評価するために、確率プロットで従業員の評価データを表示しました。
上記の確率プロットは、部門Aのデータが正規分布にほぼ従っているものの、部門の従業員の評価に明らかな外れ値が1つあります。
各部門のデータを、分布の適合性を判断するために確率プロットで表示しました。各部門の確率プロットのデータは、適合線とほぼ一致しているため、仮説検定の基準を満たしています。仮説検定により、3工場の各部門の評価点に違いがあることが強調されたため、Suriyakraiさんは評価への懸念の妥当性を検証することができました。Minitabの仮説検定の出力には、3工場の評価間の統計的に有意な差を示すグラフとp値が含まれていました。
Suriyakraiさんは分析結果を手に、評価方法を改善する必要があることを経営陣に主張でき、また、Minitabの出力が明確なため、議論に説得性を持たせることができました。「経営陣は私が何をしているかわかっていなかったため、結果を効果的に伝えることがプロジェクトの成功に不可欠でした。「p値は、議論において優れた証拠になりました。」とSuriyakraiさん。
結果
データ分析により、不公正な評価の可能性が低減し、TRR Groupの標準化された人事考課プロセスで各従業員に昇進の平等な機会が与えられることを確認できました。
TRR Groupの経営陣は評価フォームに欠陥があることに納得し、新しい、厳密で効果的な評価フォームの作成につながりました。人事部門が部門長の報告の有効性に満足したため、TRR Groupの3工場のデータに基づいて、Suriyakraiさんは、自信を持って公正な報酬および開発計画を経営陣に提示できました。次のステップは、この調査結果を7社の子会社すべてに展開することです。
このプロジェクトにより、実験計画(DOE)などの統計トレーニングを、人事部門、生産エンジニア、品質管理担当者など、TRR Groupの他の領域にも行なってはどうかという話し合いが生まれました。「Minitabをプロセスに組み込むことの利点と、データに基づいて意思決定を行うことが作業の質をどれほど高めるかを、説明しています。」とSuriyakraiさん。TRR Groupはが経験したデータ分析の利点と成功を会社全体に新しい方法で展開していくことは、自然なことでしょう。
組織
Thai Roong Ruang Sugar Group
概要
- タイの大手砂糖製造・輸出会社
- 1946年創業
- 製糖用設備の研究、改造、改良に継続的に従事
- 精糖、糖蜜加工、エタノール燃料、製糖を含む関連産業の子会社7社
課題
部門長間の不公正な判断を最小限に抑え、不当な扱いの可能性を排除するために、従業員の評価を標準化します。
使用された製品
Minitab® Statistical Software
結果
- TRR Groupの製糖工場3工場の全部門における従業員評価を標準化
- 公正な報酬のための確立されたガイドライン
- 信頼性の高い評価により、各従業員の自己啓発計画を後押し